OpenSessame Workshop 2004 お茶会プログラム |
■プレゼンテーションの詳細
ご紹介に預かりました黒子です。私のほうではSESSAMEの活動報告のひとつとして、教材として企画から開発、テストまで全体をカバーしようとここで作成しています、鹿威しの活動についてご紹介したいと思います。
鹿威しというのは実際に作って動かせる教材で、狙いはメイテックさんのLEDの実機の教材と一緒です。手軽で楽しい教材、この鹿威しは手軽ではなくなってきていますが、最初はレゴを使った家庭用の小さい20cm四方のものだったのです。それであれば、皆さんのお手元、会社でも家庭でも使えます。SESSAMEの最初の立ち上げの目的として、日本の産業競争力の発展を願ってということで日本の心を考えて作っています。それから、エンジニアリングの勉強ができますように、仕様検討から設計、ソフト、ハード組込みにおける必要な技術全体をカバーしています。家族みんなで楽しめる組込み開発教材ということです。
仕様書がダウンロードできるようになっていますので、どうやって使っていただきたいかなというと、皆さん技術者ということで技術はシステムが基本なのでそういうことを楽しんでいきたいなと思います。最近の若者の科学離れということが言われていますが、このようなレゴを使ったおもちゃでうまく、一緒にやっていければ、そこの問題も解決できるのではないか、ということでお子さんと大人と両方のことを考えています。
それから、最近の開発/設計手法の傾向として、アブストラクトな方向に行くことが多い。それを手法としては大事なのですが、抽象的な考え方だけではモノはできないので実働体験してみようということを考えている。結論としては、わくわくどきどきできる教材の提供ということです。
ここから、教材としての位置づけですが、初級と中級の二つに使うことを考えています。
初級の方ではSESSAMEの初級コースで使っている構造化設計:データフローでモデリングしてインストラクチャードストラクトを作っていく、モデルとしては状態遷移を使ってデータフローで作った各プロセスを設計していくというのを考えています。テストに関しても教科書を取り揃えていまして、開発者が行わなければいけないテストとしてステージ、バンク境界、状態遷移等をサポートしていきます。
今日のプレゼンテーションは今後の新造コンテンツのひとつの紹介としてお話ししています。このバージョンはバージョン1なのです。リモコンでスイッチONすると水が出始めて、スイッチOFFすると水が止まる。比較的単純なのですが、それを実際のテスト運用として、3日もテストしています。やってみるとわかるのですが、黒子のやかんのときにも水がはねたりして、このままでは、水はねの問題が解決できないものですから、バージョンアップとして将来は002になります。レゴでは作っているのですが、先ほど水が入って竹の受け口が落ちた後、戻ってくるまでに水がぽんと飛んでしまう。その間に水を止めようと、という仕様をこのように作っています。これを実際の工業活動で考えてみると、プロダクトライン開発の練習になります。
SESSAMEで揃えている、こちらに関連する教材としては、この機材を作るための構造化手法を使った設計をサンプルとして公開しています。また、初級編用のテキストをセミナなどを通して公開しています。中級に対しては、組込みエンジニアはRTOSを使ったシステムが多いということで名古屋大学の高田先生が主催しているTOPPERSというプロジェクトでμITRONのOSを使った実装例を作成してもらっています。タスクパスデータを使った新機能で作られていると聞いていて、RTOSの機能を使って機能分割しやすくなっています。
それから、組み込みの人はソフトハードの技術よりに指向が偏ってしまい勝ちということで品質特性も考えられるような教材にしたいと思っています。ISO/IEC9126の6つの特性を考えたいです。特に、2003年では使用性に魅力というのが追加されています。この教材がかっこよくて人目を引いて魅力あるものになっているか、そういったものも考えるようなこともしたいなと思っています。
当初からこの教材は二上さんがずっと考えていたものですが、この規模としては非常に小さなモデルです。ところが実際にきちんとしたものとして設計仕様をドキュメントにするのは非常に難しい。仕様をダウンロードしてみるとわかるが、この小さなものでも要求仕様書も6000単語以上の語彙を使っています。それくらいやらないと本当にわかる仕様書はできない。で、そういったものができると本当にバグ無しのもの、すごいものが開発できるかというと、実際にはそれでも難しいのが組込みです。そういった例を表現できたらと思っている。
SESSAMEはその他に話題沸騰ポットという教材を作っています。こちらはTOPPERSのシミュレータで実装されていて、学ぶこともいろいろあると思うのでぜひとも使ってみてほしい。
次は、今日やってしまいましたが、鹿威しとポットを使ってお茶会をシミュレートする、といったわけです。
まとめとしては単なるハードとメカを組み合わせた教材ではなくて、開発全体、仕様設計実装テストまでをカバーした開発全体の教材としたい。それから、小さなモノで動かして面白く遊べるものという位置づけもありますので子供から学生、大人まで裾野を広げる役割として使用していきたいなと思っています。
■台本
<このデモの意図について>
組込みシステムは生活の役に立ち今後の産業基盤になるという主張を日本人が理解する茶会を象徴としてデモする。同時に、鹿威し、話題沸騰ポットなどの教育教材を使うことができることをアピールする。
<道具立て>
茶入れ、茶筅、茶杓、点前盆、鉄瓶、火鉢、うちわ、茶碗、鹿威し、抹茶、工具、雑巾
菓子盆、BGM用の音楽テープ、机、椅子、ポット、やかん、箒、湯、懐紙、毛氈、黒子衣装
和服、菓子、台本、リモコン
<筋書き>
N: 「ここは、東京赤坂のビルの中。今日は,年はじめの行事、初釜です.ご亭主は、少しでも茶人の風流を演出しようと工夫を凝らしています.おかげで弟子は,亭主の指示で準備に追われ大忙しです。」
* BGMは、琴の曲
* プロジェクターで茶室の写真を出す
* 内弟子は、せっせと庭掃きをしている(ジェスチャー)
* 亭主は立礼席を仕組む
* 黒子は片膝立て静止
亭主: 「そろそろお客人が見えるころだから,お湯を沸かしてくださいな.水は、きのう丹沢から届いた護摩屋敷の湧き水を使うのだよ.」
内弟子: 「はい,わかりました.」
* 内弟子は,炭をおこし,沸かす仕草[鉄瓶,団扇,火鉢]
内弟子: 「わびさびの道も良いけれど,炭をおこして湯を沸かすのは,あーぁ,大変だー.ご亭主は理解のあるいい人なのだけれど、人使いが荒いんだよな.おかげで,あたしゃ,いつも苦労させられる.ぶつぶつ.」
N: 「お茶会のお客様が到着しました。今日のお客様は、飯塚先生と久米さんです。」
* お点前が客を誘導して会場後ろ手から入場する
* 亭主は、ステージの下で迎える
亭主: 「ようこそお越しくださいました.」
正客: 「お招きにあずかり、ありがとうございます.」
* 正客と次客は亭主に礼、着席する
* お点前も席に着く
亭主: 「どうぞ御ゆるりと.今日は,新しいお道具で鹿威しを用意いたしました.黒子や,鹿威しを動かしておくれ.」
* 黒子は立ち上がって黙礼
N: 「黒子はそそくさと鹿威しを運転開始します.このご亭主はお金持ちですから赤坂の真ん中で鹿威しを動かす黒子を雇えるわけです」
* 黒子は,ヤカンをもって鹿威しの前へ移動,給水開始する.コーン音が出て人力サイクルが始まる.
正客: 「この都心にあって、なんと風流な。また結構な庭の響きですなー」
次客: 「まことに」
* 次客も大きくうなずく
N: 「さて、みなさん。このようなお茶会はありえませんね.」
* 内弟子は団扇、黒子はやかんを持って整列する。
N: 「日本の歴史において、鹿威しのために人を使うということは大名ですら考えませんでした。同じく人件費の高い現代日本では、人手をかけて湯を沸かしたり、鹿威しを制御するための黒子は雇えませんね.
では,東京赤坂のビルの中で風流お茶会を楽しむにはどうしたらよいのでしょうか?その答えは,組込みシステム開発とソフトウェアにあるのです.」
* 黒子は,突然SozeXのセットアップをはじめる.
演出家: 「さあ、ここで今まで鹿威しのメカニズムの一部だった黒子が自分の仕事が嫌なので、コンピュータに鹿威しをやらせようと、組込みソフトのソフトウェアに仕事をバトンタッチします。」
* 内弟子は団扇を置いて,ポットを抱き嬉しそうに微笑み、設定をする。
演出家: 「そして、先ほど炭をおこすのが大変だと、ぶうぶう文句を言っていた内弟子も自分で炭を熾さずに電子ポットでお湯を沸かしてしまおうとします。こうして段々組込みソフトウェアというものが世の中に広まっていくんですね」
* 亭主は,リモコンでSozeXを運転開始する.
演出家: 「亭主は赤外線リモコンで鹿威しを稼動開始しました。ちょっと準備が足りないので人手がまだいるのですが、大体のところは動いたというところでまず拍手をお願いできますでしょうか」
演出家: 「さあ、この鹿威しを見るのも楽しいのですが、せっかくのお客様ですから、今日は本格的なお茶のお手前を楽しんでいただきながら、プレゼンターは教材の解説をお願いします。」
* お点前始める 茶を点てはじめる
* 黒子は、被り物を脱ぎ、プレゼンをはじめる。
森: 「このシステムでは,黒子が常に必要でした.生活,産業には黒子の仕事が山ほどあります.組み込みシステムは,
@ポットの湯沸しのように、今までの手間仕事を置き換える
A鹿威しのように誰も想像しなかった事を実現してしまう
この2つを実現するのが組込みシステムです.」
* 森さんのプレゼンでセサミと鹿威しの紹介(15分)
森: 「どうやらお点前が終わったようですね。」
正客: 「いやー、結構なお点前でした。ところで、あのお道具は?」
点前: 「詩仙堂風鹿威し、銘は、たかおの夜長でございます.竹は,那須塩原の江口家のご好意で取り寄せました.」
正客: 「して、開発方法は?」
亭主: 「リアルタイム構造化分析と設計でございます。4月には、TOPPERSリアルタイムOS版にいたします。」
正客: 「なるほど、結構なお点前とお道具で」
* 出演者が全員並ぶ
演出家: 「以上が、セサミ流組込み教育教材のご紹介とお茶会デモでした。ここでご正客から一言」
正客: 「いやー、お茶がこんなに手間隙かかるとは知らなんだ、、、、やっぱり勉強は大事だ」
演出家: 「そういうわけで、お茶会と組込みシステムは見た目では複雑ではわからない、という落ちになると思います。ありがとうございました。」
* メンバーは挨拶しておしまい。