Open SESSAME Workshop 2007 Report |
■ Open Sessame Workshop 2007の概要
SESSAME は 第5回 組込みソフトウェアに関する教育・育成ワークショップ(Open SESSAME Workshop 2007)を、2007年1月9日(金)に、東京両国のKFCホールにて開催しました。 Open SESSAME Workshop 2007 では ”組込みソフトエンジニアが拓くものづくり” をテーマに組込みソフトエンジニアがやりがいを持って仕事にのぞみ、将来も組込みの世界で活躍できるようになるためにはどう考え、何をすればよいのかを講演者と参加者が一体となって探りました。 |
OpenSessame Workshop 2007のプログラム |
0. | Workshop 2007のねらい | 鈴木 圭一(富士フイルム) | アンケート集計結果 | ||
1. | 基調講演 『自分2.0〜自身の過去・現在から未来を考える』 | 平鍋 健児(チェンジビジョン) | アンケート集計結果 | ||
2. | SESSAME
の活動報告(1) 〜セミナ開発から飛行船教材製作まで SESSAMEの有効な使い方〜 |
酒井 郁子(ビースラッシュ) 小林 一夫(ブラザー工業) |
アンケート集計結果 | ||
3. | SESSAME
の活動報告(2) 〜セミナ開発から飛行船教材製作まで SESSAMEの有効な使い方〜 |
清水 尚彦(東海大学) 西川 幸延(NECソフトウェア北陸) 二上貴夫(東陽テクニカ) |
アンケート集計結果 | ||
4. | ひとりの力からチームの力へ 〜OJTの活用〜 | 林 勝義(パイオニア) | アンケート集計結果 | ||
5. | コミュニティへの参加とスキルアップ | 森 孝夫(三栄ハイテックス) 幸加木 哲治(リコー) 道北 俊行(堀場製作所) |
アンケート集計結果 | ||
6. | スキル開発「自分計画」 | 平鍋 健児(チェンジビジョン) 山田 大介(ビースラッシュ) |
アンケート集計結果 | ||
7. | パネルディスカッション 『5年後のあたなへ。未来のあなたが活躍するためには?』 |
パネリスト: 平鍋 健児(チェンジビジョン) 山田 大介(ビースラッシュ) 舘 伸幸(NECマイクロシステム) フロア担当: 酒井 郁子(ビースラッシュ) 國方 則和(TEAC) |
アンケート集計結果 |
プログラム0 「Workshop 2007のねらい」 |
■講演者 鈴木 圭一(富士フイルム)
■概要
プログラム1 基調講演 「自分2.0〜自身の過去・現在から未来を考える」 |
■講演者 平鍋 健児(チェンジビジョン)
■基調講演の概要
自分2.0宣言
【ステップ1: 人生60年表 を書く】 会場の参加者に人生60年表を書いてもらう。(例として平鍋氏の年表が示される)
目的:人生の中で、自分の位置を確認する。
これまでの自分の人生を年表にして「見える化」してみる試み。大きな時代のグローバルな流れと、自分周りのローカルな流れを確認する。
【ステップ2: キークエスチョンに答える】 約20分ほど人生60年表を書いた後、キークエスチョンに対して答えを記入していく。
Q1. 小学校のとき「自分の夢」として考えていたことは何ですか?
Q2. 何をしているときに、もっとも自分の能力が発揮できていると感じますか?
Q3. 大学を選んだ(選ばなかった)理由は何ですか?
Q4. 仕事を始めてから現在まで、もっとも誇れる成果は何ですか?
Q5. 仕事をはじめてから現在まで、もっとも辛かったことは何ですか?また、それはなぜですか?
Q6. 現在、興味がある技術は何ですか? また、それはなぜですか?
Q7. 目標とする人(ロールモデル)がいれば教えてください。また、それはなぜですか?
Q8. どんなときに、「仕事をしていてよかった」と感じますか?また、それはなぜですか?
Q9. これまで強く意識して努力したことはなんですか?また、それはなぜですか?
Q10. 両親や親戚で自分に大きな影響を与えた人はいますか?また、それはなぜですか?
Q11. 歴史上の人物で尊敬している人はだれですか?また、それはなぜですか?
Q12. 悩んだときに相談できる人は誰ですか?
Q13. 自分の子供にはどういう親でいたいですか?
Q14. パートナー(妻や夫や恋人や友人)に言われて嬉しい言葉はなんですか?
Q15. 現在、技術以外に興味のあることは何ですか?また、それはなぜですか?
Q16. これまでのソフトウェア技術で革新的だと思えるものはなんですか?
Q17. 将来管理職になりたいですか?技術を極めたいですか?両方ですか?また、それはなぜですか?
Q18. これまでの仕事で影響を受けた上司・同僚はいますか?また、そlれはなぜですか?
Q19. 自分の弱みで克服したいと思うことは何ですか?
Q20. これまで人から褒められたことで一番嬉しかったことは何ですか?
次に上記の20の質問の答えからキーワードを抽出し、下の8つのボックスにマッピングした。
仕事で大切にしてきたこと | 将来なりたい姿 | 自分の強み | 強みをのばす行動 |
目標とする人、やりたいこと | 感謝したい人、ハッピーにしたい人 | 自分の弱み | 弱みを克服する行動 |
【ステップ3: 自分2.0宣言をする】 最後に、上記のキーワードを以下の自分2.0宣言に当てはめた。
自分2.0宣言
「(名前) 」は「(仕事で大切にしてきたこと) 」を大切にするエンジニアです。 「(自分の強み) 」が、自分の売りです。 「(自分の強みをのばす行動) 」を通して、これを伸ばし、「(将来のなりたい姿) 」としてキャリアを積みたいと考えています。 目標は「(目標とする人、やりたいこと) 」です。 現在足らないのは「(自分の弱み) 」です。 それを得るために「(弱みを克服する行動) 」していきたい。 達成できたら、真っ先に報告したい人は「(感謝したい人、ハッピーにしたい人) 」です。 |
思ったとおりのキャリアパスを描けなくてもいい、まず強く思うことが大事である。(セレンディピティ) 好奇心、持続性、柔軟性、楽観性、冒険心を持って自分自身を作り上げて欲しい。
■キーワード・キーセンテンス
「仕事人生は4つの箱=VSOP」 「20代は Vitarity(元気!)」 「30代は Speciality(専門性)」 「40代は Originality(独自性)」 「50代は
Personality(人間性)」
※ 平鍋 健児氏のブログのページから、講演資料(PPT)、60年年表ワークシート、パネルディスカッションのマインドマップをダウンロードすることができます。
プログラム2 「SESSAMEの活動報告(1)〜セミナ開発から飛行船教材製作まで SESSAMEの有効な使い方〜」 |
■講演者 酒井 郁子(バックスラッシュ)
■概要
SESSAMEのセミナーを作り上げた道のりについて説明。セミナーの教材として開発したししおどしの工作やデバッグの様子を紹介。
【セミナー開発で得られたこと】
■キーワード・キーセンテンス
「セミナー開発で組込み屋魂を再認識できる」
■講演者 小林 一夫(ブラザー工業) e-Learnig 教材の有効利用について
■概要
2005年に賛助会員になり、中級セミナーの e-Learning 教材の社内上映を開始した。2003年から初級技術者や異動者向けのC言語演習中心の社内教育を実施している。社内教育で作成した教材の登録をはじめ、IT&ET研修レポートを登録していった。SESSAMEの初級/中級
e-Learning 教材を全事業所でアクセス可能にした。また、全ソフトウェア技術者のメーリングリストを活用し情報交換を行っている。
基礎的なソフトウェアエンジニアスキルを獲得して、配属先の固有技術をいち早く習得し成果を上げられる人材を育成することを目標としている。
■キーワード・キーセンテンス
「e-Learning 教材の社内有効利用」
プログラム3 「SESSAMEの活動報告(2)〜セミナ開発から飛行船教材製作まで SESSAMEの有効な使い方〜」 |
■講演者 清水 尚彦(東海大学)
■概要
SESSAMEの教材を大学の学生教育に利用。 SESSAMEのメンバーと組込みソフトウェア初級ではなく、初心者向けの教材を M16miniキットをベースに作った。また、2004年には
SWEST HAMANA-1 でロケットに搭載するデータロガーを開発するプロジェクトに参加。
HAMANA-1 の教育効果としては、デッドラインのある開発を経験し目的指向のシステム設計を行うことができた。また、英語の仕様書を解読したり、アナログ回路の設計、プリント基板開発、アセンブラによるソフトウェア開発を行った。
現実のプロジェクトを進めていくなかで、組込み開発の難しさ・楽しさを学生に経験させることができた。一人の力でできないことは多い、自分に欠けている部分を補う仲間に
SESSAMEを通じて知り合えた。
組込みエンジニア教育への社会的注目度は上がっている。ところが、情報通信系学科の競争率は下がり続けている。子供達が夢を感じられない業界になっていないか。エンジニア個々人が業界のメリットを子供達に宣伝する必要がある。
■キーワード・キーセンテンス
「組込み技術者を増やすには、この業界に興味を持つ中高生をもっと増やす必要がある」 「エンジニア個々人が業界のメリットを子供達へ宣伝しよう」
■講演者 西川 幸延(NECソフトウェア北陸)
■概要
SESSAMEの組込みスキル標準(ETSS)に関する活動の報告を行った。ETSSのねらい、使い方、導入のメリット、ETSS標準ガイドブックを解説。
■キーワード・キーセンテンス
「スキル標準:スキルの可視化による開発力強化」 「キャリア標準:エンジニアリング観点の専門分化と深化による開発力強化」 「教育カリキュラム:組込みソフトウェア開発における人材育成による開発力強化」 「社外へ飛び出そう」 「社外活動が刺激となり、自分の成長につながる」
■講演者 二上貴夫(東陽テクニカ)
■概要
HAMANA-1, ETロボコン、飛行船開発など SESSAMEが支援したプロジェクトを紹介。
スプーンをたたくことで発せられる超音波を使って符号を作り、飛行船を制御するしくみを説明する二上氏 | スプーンで作った符号で飛行船を制御しているところ |
■キーワード・キーセンテンス
「仕事愉快」 「SESSAMEで開発した教育教材が学校でも使われる」
プログラム4 「ひとりの力からチームの力へ 〜OJTの活用〜」 |
■講演者 林 勝義(パイオニア)
■概要
ひとりの力が上がればチームの力も上がる。チームの力が上がれば、個人がより楽しくスキルアップできる。ひとりの力をチームの力で上げていくのがOJTである。
OJTの有効性は広く認知されているが、うまく回っていないのはなぜか。一つは量的な問題として指導しなければいけないエンジニアが多い。また、質的な問題として教える側が教えるスキルを持っていない、バブル世代がニート世代を教えることのギャップなどがある。
【バブル時代の問題】
バブル時代にC言語を学んで、手に職を付けて、コードを量産する人になった。しかし、バブル前後でエンジニアの価値観は大きく変わっている。そのため、昔やっていたOJTのやり方に対して見直しをかける必要がでてきた。
【OJTの前提】
職場での技術目標があり、仕事をしながら(座学ではない)、計画的に学ばせること。「計画(ここが大事)」「実行(指導のしかた)」「計測」「終了(報告会)」この4つが重要である。
【OJTとETSS】
OJTでは実際にやれるようになることが非常に重要であり、スキルの習得であり知識の習得ではない。ETSSと方向性が同じであるため、ETSSをベースにした育成計画を作成することが有効である。OJTセミナーを2007年3月に実施するのでご期待いただきたい。
■キーワード・キーセンテンス
「ひとりの力が上がればチームの力も上がる」 「職場の技術目標があり、仕事をしながら、計画的に学ばせることがOJTである」
プログラム5 「コミュニティへの参加とスキルアップ」 |
■講演者 森 孝夫(三栄ハイテックス)
■概要
SESSAMEの合宿に参加すると非常に深い議論ができる。また、さまざまなプロジェクトに参加することで人との出会いがある。さらに、ソフトウェア設計についてメーリングリストやミーティングで議論することでソフトウェア設計について考える機会を得た。
■キーワード・キーセンテンス
「設計について深く議論し考える機会を得る」 「技術力とは目的を正しく設定・把握する力、そして目的に対する適切な手段を導き出す力の両論である」 「SESSAMEは好奇心を満たせる場」
■講演者 幸加木 哲治(リコー)
■概要
伝えたいのは輝いている若手のイメージではなく、世知辛い現実の荒波にもまれ、もがいている若手のイメージである。第一回のUMLロボコンで初代チャンピオンになった。学生時代はソフトウェアを研究のためにただプログラムを書いていたが、UMLロボコンでは設計も競っていたためソフトウェアの品質について真剣に考えるようになった。その後、自分はソフトウェアの品質や生産性の重要性について気がついたが、その重要性を後輩に伝えることの難しさに気づいた。
SESSAMEのWG2とWG4で教科書作りに貢献することができた。自分と会社とSESSAMEとの関係は WIN-WINでありたい。
自分がSESSAMEに参加するモチベーションとは、「他社技術者と交流して視野を広げたい→井の中の蛙にならぬように」「自分が持っているスキルを世の中に役に立てたい→すべては自分に還ってくる」と考えている。
■キーワード・キーセンテンス
「自分と会社とSESSAMEとの関係は WIN-WINでありたい」
■講演者 道北 俊行(堀場製作所)
■概要
SESSAMEへの参加とスキルアップについて。ものづくりに惹かれ、組込みソフト開発者として3年目となる。SESSAME WG4 が主催する構造化モデリングの実践演習に参加し、経験豊富なコーチ(教科書の執筆者も)に出会い構造化モデリングを体験することができた。
構造化モデリング演習では「簡易携帯電話」のモデリングを行い、普段の仕事とは分野の異なる開発に触れることができた。要求・分析・設計のモデルを作成し、演習時にコーチからレビューを受けるため、教科書では学べない実践的な学習を行うことができ、効果的な学習スキルアップができた。
構造化モデリング演習が終わった後も引き続きメーリングリストに参加することで関係を継続している。
■キーワード・キーセンテンス
「コミュニティへの参加はタイミングが大事(レベルアップしたいとき)」 「コミュニティへの参加でスキルアップ」 「社内にいるだけではできない経験がある」 「経験豊富な技術者・異分野の技術者との出会い」
プログラム6・7 「スキル計画(自分開発)」「パネルディスカッション:『5年後のあたなへ。未来のあなたが活躍するためには?』」 |
■講演者(右から) 平鍋 健児(チェンジビジョン) 山田 大介(ビースラッシュ) 舘 伸幸(NECマイクロシステム) ■フロア担当: 酒井 郁子(ビースラッシュ) 國方 則和(TEAC) |
■概要
事前にパネルメンバーが書いた年表(プログラム1の内容)を紹介し、自分史を振り返る。パネラーの過去や経験、そのときの感情などを深く掘り下げることで参加者の周りの環境や現状の問題点について気づきを与える。
平鍋氏から5年後に向けて変えたくない大切なことと変えなければならないことの質問
【山田氏】
変えたくないこと:ものづくりの品質へのこだわり
変えたいところ:技術者に外を見て欲しい
【舘氏】
変えたくないこと:チームワーク
変えたいところ:組込みソフトについての認知度を上げる
■グループワーク
会場で4〜5人くらいのグループを作って、次のことについてディスカッションを行う。
各グループからディスカッションした内容を発表してもらい、次々に議論を広げていき、その後、自分たちが変わるためには環境を整える必要がある。変わるための環境についてディスカッションし、明るい未来をイメージ会場全体で共有した。
■キーワード・キーセンテンス
「楽しさを発信していこう!」
※ 平鍋 健児氏のブログのページから、講演資料(PPT)、60年年表ワークシート、パネルディスカッションのマインドマップをダウンロードすることができます。
第5回 組込みソフトウェアに関する教育・育成ワークショップに関するご意見、ご感想は までお願いいたします。
Open SESSAME Workshop 2007 Report は組込みソフトウェア管理者・技術者育成研究会(SESSAME)が著作権を所有しています。 本レポートの全体または一部を複製、利用をされる場合および報道を目的とした公開の際には、あらかじめ組込みソフトウェア技術者・管理者育成研究会(SESSAME)の事務局から承諾を受ける必要があります。